「だから、殺人鬼の「き」っていうのは鬼のことなんです。鬼っていうのは、まぁ恐怖の別称みたいなイメージで、殺人鬼っていうのは殺人の恐怖。つまり殺人という行動そのものを表しているわけです」

「ふんふん。でも殺される恐怖って云ったら死神じゃない?」

「それは殺人イクォール死っていうのが成り立ってるからだと思います。殺人という行為はあくまで原因であって死は結果。その結果の恐怖で成り立ってるのが死神。病気で死のうが寿命で死のうがそのとき感じた恐怖の塊が死神で、殺人鬼はその原因の一つである殺人の恐怖の塊って感じですかね」

「殺人という行動そのものってことか。私たちが人であって生きるために呼吸をするのと、彼らが殺人鬼であって殺人をするのとはイクォールの関係なわけだね。たしかに呼吸するたび悦に入ってたら変態だわな」

「あくまで私の考えでは、ですし。行動としてはどちっにしたって褒められたもんじゃないんですけど・・・。」

「いやいや面白いよ。殺人狂は殺人のときに快楽があって、殺人鬼にはそれが無い、と。ふうん。なるほどねぇ」






「・・・・・・何、話してるの?」







いつの間にか店内に入ってきていたイルミの言葉に、

「殺人鬼と殺人狂の違いについて」
と、ソウルさんは笑顔で返し。

ビキッ

と、私は見事なまでに固まった。






F00lish







「何それ」

「んー?が「ゾルディック家は殺人鬼じゃない」的なこと云ってたからさ、何でかなーと思って話聞いてたらそんな話題に」
ね、とソウルさんに同意を求められて、私は「ははは・・・」とぎこちない笑みを返す。

イルミはそんな私の様子と、店内をぐるりと見渡して。
「・・・・・ようするに暇だったから聞き出したんでしょ」
「そうとも云う」

今日のお客の来店数は0。
元々大きな店でもないし、立地条件もあまり良いとは云えないので偶にこういう日があるのだ。
(何でこの店やっていけてるんだろう、本当・・・)

イルミの言葉にソウルさんはカラカラと笑う。
私はそんな光景を横目に収めつつ、こんなことになった経緯を思い出していた。





私はこの世界の事を、得にゴンという少年の周りでおきる(はずの)出来事を知っている。
当たり前だ、私の世界ではここは漫画で、その上、私はその漫画を読んでいたのだから。

だから、観光のツアーが出来てその上儲かるくらいだからゾルディック家って有名なんだろうなぁ。とか、暗殺一家っていうのも一般常識なのかなぁ。なんていうことを考えたりもしていた。

しかし、これは無い。

「・・・・・・ソウルさん。この人、お知り合いですか・・・・?」

「・・・・・いや、違うと思う。・・・・それに私、こんな名前、聞いたことも無いし・・・・」

私たちは目の前にどどん!と積まれた新刊の前でそんな会話を交わしていた。
著者は「ビランフェル・エリゴル」
タイトルは・・・・


「ぞ、『ゾルディックに迫る!』・・・・・・・」


世の中には勇気のある御仁がいたものである。

「う〜ん、取り寄せの時に題名ちゃんと見とけばよかったかねぇ・・・。適当に取り寄せてるからなぁ・・・。でも置いとけば面白がって買いそうなのがいるし・・・」

ソウルさんがブツブツとそんなことを云っているのを聞きながら、私は本へと視線を移す。
本の帯には「期待の新人ビランフェルが書くゾルディックの現在と過去!」とある。

(売れなさそー・・・・)

期待の新人って何だ。このビランフェルとかいうのはこれが初作品なのか?
そんなことを思いながらパラパラとページをめくる。
どうやらゾルディック家の過去の仕事と今現在引き受けている仕事がどれだけ酷いものなのかを延々と書いているものらしい。
そして、私が始めのページを開いたとき、その言葉は目に飛び込んできた。

(殺人鬼・・・・?)

そこにはゾルディック家が凶悪な殺人鬼だと書かれていた。
んー・・・たしかに一般常識てきにはそうなんだろうけど・・・・やっぱ

「嫌だなぁ・・・」
「何が嫌なの?」
「うわぁっ!!」

こ、この人はいきなり背後から話しかけないで欲しいと何度云えば・・・・っ

「なんでも無いです!ほら、さっさと店に並べてしまいましょう!」
今のこの感情は説明しずらい。と、いうかぶっちゃけ面倒だ。
私は話しを誤魔化すためグイグイと新刊の入ったカートとソウルさんを店へと押しこんだ。



のだが、

「ヒマー・・」
あれから数時間。客が来ない。
「ねぇ・・・ー」
「はい?」

カウンターに頭をついて、すっかりだらけ切っているソウルさんに目を向ける。(私も人のことは云えないが)

「さっきの、何が嫌だったの?」
「・・・・は?」
「あの新刊見て「嫌だなぁ」って云ってたでしょ。何で?」
「あー・・・・」

今思えば、この時点で私は暇すぎて思考が停止していたのだろう。
そうして、私はソウルさんにぺらぺらと自分の考えを語ることとなったのだ。
で、冒頭に戻る。



そのソウルさんといえば、今目の前で渦中のゾルディック家の長男、イルミに私の考えを話ている。(やっぱり私より説明は上手い・・・)

と、いうか私のこの考え自体が私の世界の小説を元にしている上、本当に暇つぶしにまとめてみただけなので理論破綻もはなはだしい。

元々人に話そう、などとはこれっぽっちも思っていなかったので、ソウルさんに話すときも話がそれるは飛ぶはのものすごく分かりにくいものになってしまった。

それでも私の説明を理解してくれたソウルさんは相当に頭がいいのだろう。(うらやましい・・・)


「ふぅん。そんな事考えたこともなかった」

「明確に区別したことなんて無かったものねぇ」

うんうん。と頷くソウルさんを横目に見ながら思わず遠い目をしてしまう。

こんな話、人に聞かせることはさることながら、もちろん区別の対象になる人物に聞かせるつもりなどこれっぽっちも無かった。

私は殺人や犯罪とは程遠い世界に生きてきた。もちろん、私の世界でも人は死んでいたし、凶悪犯罪も起きていたが、それらは正直、ブラウン管の向こう側の話だ。

だから、人が死ぬ、という感覚はけっこう希薄な方だと思う。
知識としては当たり前にもっているソレも、実際に死に近い場所にいる彼らとはだいぶずれたものなのだろう。きっと。

そんな私が彼らの行動による区別やら、死についてなどを語るのは、なんだかおかしいような気がするのだ。


「ねぇ」

「は、はい?」

イルミに話かけられ、思考の海から現実へと引き戻される。

無表情な目にじぃっと見つめられる。
な、なんだろう。やっぱりさっきの話が気にいらなかったのだろうか。

イルミは少し首をかしげると、

「君って、変だよね」

「・・・・・・・・」

と、云った。

(自分の顔に針刺したり、変形させたり、土の中で眠ったりする人に変人呼ばわりされたくないんですけどっ!!!)
と、まぁ心の中でツッコミをいれてみたりする。さすがに口には出せないが。

「イルミ・・・。女の子にそれは無いでしょうよ」

あきれたようにソウルさんが云った。

「そうなの?」

(で、何でソウルさんじゃなく私の方を向いて聞く?!)

「ふ、普通はそうだと思いますけど・・・」

あはは。今絶対笑顔ひきつってるぅ。

「ふぅん」

イルミはそれだけ云うと、興味を無くしたようにソウルさんに予約を入れていた本について聞きはじめた。
店に来たのも、元々それが目的らしい。

そうして、ソウルさんはから目的の本を受け取り、ソウルさんにすすめられた本数冊を購入すると(その中に『ゾルディックに迫る!』があったことは見なかったことにする)イルミはちらりとこちらを見た後、店を出ていった。


「はぁ・・・」

肩に余計に入っていた力を抜く。どうやら結構緊張していたらしい。
イルミは無表情で何考えてるか分からないから、そのせいかもしれない。
(そういえば、まともに会話したのも今日が始めてだ・・・)

さぁて、気をとりなおして店の掃除でもするか。どうせすることも無いわけだし。

私は壁に立てかけてあったホウキを手に取るといそいそと掃除を開始した。






長閑にすぎる春のある日の話。






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「あー

「はい?」

「イルミのじいさんのゼノってやつがさ。あの話面白いから考えたヤツの顔が見たいって」

「は?」

「今こっちに向かってきてるらしいわよ?」

「えぇぇぇええっ?!!」

どうやらもう一人、危ない知り合いができそうです。

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アトガキ
小説第二段。
まぁなんと云いますか、ネタ考えたのと書き上げたのに時間差があるので、自分でもなにがなんだか分からないものになりました・・・。
理解不能なものですみません・・・orz
ちなみに主人公の考え方は「戯言シリーズ」から。
あぁいう独自の世界観をもった小説は大好きです。